前回のに引き続き、効果的な内定者研修のあり方について考察します。
今回は、内定者研修を実施する企業が心得ておくべきポイントや、効果的な研修内容についてお伝えします。
内定者研修は姿勢やマインドを学ぶ場
内定者研修をどのような内容やカリキュラムで行うかについて考える際、まず注意したいのは、「内定者研修は実務スキルを学ぶ場ではない」ということです。
一般的に内定者研修の多くは10月ごろからスタートしますが、この時期はまだ入社後の配属先が決まっていないことも多いはず。また、配属先が決定したからといって、業務に関する具体的なスキルを学んでも、実務に参加する機会がないため、学びの定着につなげるのは難しいのです。
スムーズに新入社員研修に参加するためのマインドや社会人として必要な最低限のビジネススキルなどを育くんでいくのが内定者研修の目的であるというポイントをしっかり押さえながら、具体的な内容やカリキュラムを企画するようにしましょう。
内定者研修で学ぶべきスキル
内定者研修で学ぶべきビジネススキルには、大きくふたつの種類があります。
ひとつめはPC入力などのOAスキルをはじめ、ビジネスマナーやメール・ビジネス文書の書き方といった、社会人として仕事をする上で大前提となるような基本スキルです。
入社前のこの時期は、業務の種類などを問わず、広く活用することができる基本スキルを磨く絶好のタイミングといえるでしょう。
ふたつめは「ロジカルシンキング」「課題解決」といった、社会人として成長していくために、必ず学ぶ必要がある考え方やスキルです。
これらについては、一般的に社会人としてある程度経験を重ねていくうち、その重要性に気づくことが多いと思いますが、実務のための知識やスキルの習得に忙しくなる入社前に学ぶことで、ビジネスパーソンとして成長する際の大きな力を身に付けることができます。
これらビジネススキルについては、入社までに完璧にマスターさせる必要はありません。「社会人にはこんなスキルが必要」という認識を持つことで、入社以降も自発的に学んでいけるマインドを育みましょう。
学生から社会人へのマインドチェンジが重要
内定者研修において、ビジネススキル研修と同様かそれ以上に重要なのが、社会人としてのマインドセットを形成するための対話や指導です。
働く理由について、採用面接の時には仕事を通した社会貢献を語る内定者は多いと思いますが、採用が決まり、入社前のこの時期になると、仕事の目的が「収入」や「生活」のためといった目の前の視点にフォーカスされる傾向があります。
誰かに対し、価値を提供するからこそ、社会人として働くことができるという「他者貢献」の視点を改めて見つめ直させることも大切です。
先輩社員や採用担当者との対話の場を内定者研修の一環として組み込めば、「他者貢献」の軸を築き、仕事本来の目的に根付いた、業務に向かう強いマインドセットができるでしょう。
また、集合研修などで「誰かと一緒に働く」という意識を育むことも、社会人になった自分をイメージするための有効な方法です。先輩や仲間たちと接し、「この人たちと働きたい」「自分もここで成長したい」という思いを改めて再確認してもらうことは、内定辞退や早期退社を防ぐことにもつながります。
学びに対する納得感や安心感を大切に
時間が限られる内定者研修においては、一つひとつのカリキュラムについて受講者自身が納得して取り組むことができるようにすることが、学習効率などの点からも重要になります。
とくにeラーニングなどで自主的に学ぶ機会も多い内定者研修の成果は、本人の意欲に大きく左右されます。
「社会人への準備として、学ぶ理由」を、内定者自身が自ら考え、納得できれば、学びはより主体的なものになります。
同様に大切なのが安心感です。「研修や仕事についていけるだろうか」といった不安は、実際に業務や職場に触れていない入社前のこの時期にこそ生じるものです。定期的な対話によってそんな不安にもしっかり向き合うことで、一人ひとりが安心して研修課題に取り組み、入社に向けた動機を高められるようにサポートしましょう。
まとめ
社会人になるための正しい心構えや、必要なビジネスマナーやスキルなどをただ学ばせるのではなく、それらを学ぶべき理由や必要性を内定者自身に納得してもらえるよう促すことも内定者研修の大きな目的のひとつ。
「社会人になるとは?」という問いについて、内定者自身がしっかりと考えることができる時間を設けることも、大切なポイントです。
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