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チームを目標に向けて前進させるために不可欠なものとされるリーダーシップ。かつては、個人の資質によるものと考えられていましたが、その概念やあり方は、時代とともに変化してきました。
今回は、リーダーシップの定義や意味、そして、最新のリーダーシップ理論について解説します。
リーダーシップの定義とは?
リーダーシップとは、一言で表せば「対人影響力」のこと。
目標を共有する組織内で発揮され、メンバーたちの自律的な行動を喚起する力とされています。
リーダーシップが十分に発揮されているチームでは、メンバーそれぞれの行動や言動がより主体的なものとなり、目指すべき成果に対して当事者意識をもってアプローチできるようになります。
一般的に部下や後輩を指導したり、プロジェクトを管理する立場になったころから必要になる能力とされていましたが、「リーダーシップ=周囲に発揮される影響力」という認識の広がりとともに、近年では新人や若手の研修にリーダーシップ教育を取り入れる企業も増加しています。
リーダーシップとマネジメントの違いは?
リーダーシップと同じく、組織で成果を追求するために不可欠なものに「マネジメント」があります。実際にこのふたつは混同して語られることも少なくありませんが、それぞれの概念には明確な違いがあります。
リーダーシップが直接的な影響力で人を導く力であるのに対し、マネジメントは経営資源のやりくりなどで成果を出す手法です。
これらはどちらがより重要といったものではなく、組織で成果を上げるためには、両輪のように機能していることが大切です。
変わりゆくリーダーシップ
リーダーシップのあり方は、時代とともに変わり続けてきました。
1940年代、リーダーシップは個人の特性や能力、生まれながらの才能などに近いものとされていましたが、1960年代ごろには、行動スタイルなどを変えることで身につけられるものと考えられるようになりました。
70年代に入ると、リーダー自身の資質よりも、個々のメンバーとの関係性などが注目されるようになりました。
さらに80年代90年代ごろからは、部下の行動やその心理を観察・洞察しながら、それぞれの意思を尊重するという、現在にも通じるリーダー像が確立されていきました。
そして現在、組織の状況などに応じた複数のタイプのリーダーシップに注目が集まっています。
変革型リーダーシップの効果・留意点・育成方法
変革型リーダーシップは、共有できる目標をチーム全体に示し、有効なコミュニケーションによってそれぞれの主体的な行動を促すことで、組織に変革をもたらすタイプのリーダーシップです。どちらかというと、オペレーション主体の組織より、変化の激しいビジネスに対応して、変革の必要に迫られている組織に適しているといわれます。
このタイプのリーダーが、明確なビジョンとそれを実現する強い意志でメンバーの共感と主体性を引き出すことができれば、組織を変える強い推進力が生まれます。
一方、ビジョン構想力や人間的魅力が伴っていないと、チーム全体が総崩れになってしまうリスクもあります。元来、人は現状維持を望みがちなものです。それを変えていくためには、強い意志と魅力的なビジョンが不可欠です。
変革型リーダーの育成には、方針や自分の意思をアサーティブに伝えるコミュニケション能力の他、コーチング能力、メンバーの思いを汲みあげるための傾聴力や質問力などに関するトレーニングが有効です。
サーバント型リーダーシップの効果・留意点・育成方法
「奉仕型」や「支援型」とも呼ばれるリーダーシップです。先頭で引っ張るというより、しんがりからチーム全体に目を配るようなリーダーをイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
このタイプのリーダーは、きめ細やかなサポートでチーム内の心理的安全性を担保することで、各メンバーが主体的に活躍できる環境を整えていくことができます。
留意点は、「仲良しチーム」になってしまいがちなことです。あまりに手厚すぎる支援によってメンバーに依存心が生じてしまうと、最も大切な成果に対して主体的にコミットする行動や態度がおざなりにされてしまうこともあります。支援については個々のメンバーの特性やビジネスの状態に応じて、強弱や濃淡をつけることを意識することも大切です。
サーバント型リーダーシップには、適切な支援のためのコーチングスキルのほか、人に寄り添う意識や利他の心を持ってメンバーと関わることが必要です。
とくにチームとしての足並みが乱れていたり、思うような成果が出せていない組織などで、日々、業務に携わっているメンバーの知識や経験、感性を引き出して成果につなげることに適したリーダーシップのタイプです。
シェアードリーダーシップの効果・留意点・育成方法
前例のない成果を追求したり、新しい事業提案や、事業改革、改善を行う組織などに適しているのが、シェアードリーダーシップです。変化が激しく、個々の業務が専門的になっていく事業環境で、唯一絶対的な正解が無い中で、解を求めていくスピード感が求められる状況では特に効果を発揮します。このタイプでは、その名の通り、メンバーが主体的に行動し、それぞれの強みを生かして、組織全体の力に結集させることを目指します。
このタイプのリーダーシップには、「観察眼」が不可欠です。メンバーとの対話やそれぞれの日ごろの言動から、個々の強みやキャリアの志向を把握することで、正しい影響力を発揮できるようになります。
一方、メンバー全員がリーダーシップを発揮すると、チームがバラバラになるリスクも高まります。それを防ぐためには、組織の存在価値や目指すべき成果を明確にすることで、個々のメンバーが持つ力を正しい方向に結びつけるための取り組みや工夫が必要です。
オーセンティックリーダーシップの効果・留意点・育成方法
オーセンティックリーダーシップは、近年注目されている最新のリーダーシップのひとつです。
幼少期からの夢など、リーダーの個人としての人生観や価値観と、組織として追求すべき目標とをつなぐストーリーを、説得力を持ってメンバーに伝えることで、強い共感を生み出すのが、このタイプのリーダー像です。
チームメンバー個々人の共感が軸となるため、上手く発揮されれば組織としての目標実現に向け、この上ない推進力を得ることができます。リーダー本人が、自分の価値観や、強み、弱みなどを自己認識し、チームに開示しながら巻き込むことで、強い推進力を生み出します。
他の優れたリーダーの物まねではなく、自分の特徴を活かした生きたリーダーシップとも言えるでしょう。研修などでは、リフレクションや360度評価などによって自己認識を改めて高め、自分の価値観を棚卸して、自職場におけるリーダーとしてのマイルールを作ること、そして、それを職場実践の中でトライ・アンド・エラーして磨き上げていくことが一つの方法となります。
ビジネスを通じて社会の仕組みを変えたい、新しい生活様式を生み出せるような革新的なサービスを生み出したいといった目標のある組織に適したリーダーシップ像といえるでしょう。
まとめ
時代の流れとともに大きく変遷してきたリーダーのあり方。それは同時に、リーダーシップ多様化の歴史でもあります。
現在ではさまざまなタイプのリーダーシップが存在しますが、それぞれの特徴や強みを知り、自分たちのビジネス環境や目指すべき成果に適したタイプのリーダー像を明確にしながら、リーダー自身の個性を生かした影響力の発揮が求められています。
少しでも皆様のヒントとなれば幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。