リーダーシップ育成についてお伝えしてきた今回のコラム。最後は、リーダーシップの現在、そして未来について考えていきます。
今求められているリーダーシップ
社会的な価値や個人の価値観の多様化とともに、ビジネスがスピードをもって変化していく現在。ほんのわずか先の未来を見通すことも難しいなか、たった1人のリーダーが組織の方向性を決めていくことは益々、難しくなっています。
ここ数年、注目されているリーダーのタイプとして、いわゆる「奉仕型のリーダー」が挙げられます。「奉仕型のリーダー」とはメンバーそれぞれの声に耳を傾け、各メンバーの強みが十分に発揮できる環境を作り、支援したり、多様な発想を取り入れて、一つのプランに取りまとめるタイプのリーダーのこと。メンバーの力を引き出すことで、多様なビジネス環境や変化に対応できるチームづくりを目指す上でとくに効果を発揮します。
これからのリーダーに必要な「利他の心」
また、企業が社会的な使命を果たしていくことが求められる現在では、あらゆるビジネスの根底にある「世の中を良くしていきたい」という思いを、組織としてきちんと共有することがビジネスチャンスを作り、事業を拡大することにつながるといわれます。
これからのリーダーには、目の前の仕事をこなすだけではなく、世の中に価値を提供する意志や心構えを明確なビジョンとしてストーリーテリング的にメンバーに伝えて示すことでメンバー自身に「顧客やともに働く仲間に貢献したい」という事業当事者としての主体性や態度、行動を育むことが求められます。
社会や顧客のためにコミットし、共に働く同僚にも思いを馳せる「利他の心」で意思決定を重ねていくことが、組織の成長への寄与を高めます。
機会を得て、経験することでリーダーになる
では、そんなリーダーをどのように育てていけばいいのでしょうか。
まず理解しておくべきことは、実践と振り返りによる「経験学習」がリーダー育成のキーになるということです。
コーチングやマネジメントのスキルについては、座学研修などを通じてある程度は学ぶことができます。
しかし、どんなリーダーになるか、そのためにメンバーに何を伝え、どんな変化を生み出していくかは、リーダー本人が自分の職場の中で決断し、実践と振り返りを重ねることで学びながら成長し、自分自身のリーダーとしての有り様を確立していくものです。
「リーダーとはこういうものである」という基本的な考え方を伝えることはもちろん、それを実践できる場を用意して経験を積ませることが重要です。
任せる側にも覚悟が必要
実践と振り返りによる「経験学習」は、期間を要するもの。リーダーを育てる側も、その認識と覚悟を持って臨む必要があります。
例えば、リーダー候補者がメンバーに対し、何か新しいアプローチを試みたとしても、必ずしも好意的に受け入れてもらえるとは限りません。
一般的に現状を変えることに抵抗を感じる人は少なくないため、むしろ最初はネガティブな反応が返ってくることの方が多いかもしれません。
それでも容易に諦めずに、リーダーはメンバーの反応から学び、組織をハンドリングしていく術を身に着けていくのが経験学習のサイクルですので、リーダーを任せる側も、状況に応じて、サポートをしながらも、俯瞰した視点で見守っていく必要があります。
そのためにも、リーダー候補者とともにその上司が研修の一部に参加し、経験学習の重要性を認識することができれば、実務面でより踏み込んだフォローやサポートを促進できます。
そうした取り組みを通じ、リーダー候補者が思いきり挑戦できる環境を整えることが、周囲に影響力を発揮できるリーダーを生み出すことにつながっていくでしょう。
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