企業教育においては、知識を身に付けて理解させ、行動変容をもたらすことがとても大切です。
そして、その行動を実践の中で継続させる、つまり行動を習慣化させることが、業績に貢献する人材を育成することそのものなのです。
今回は、行動習慣化を阻む要因について、研修前、研修中、研修後に分けて考察することで、おさえておくべきポイントを明らかにします。
研修前:事前のすり合わせで目標を明確に
多くの会社では、研修を外部のコンサルティング会社や研修会社に委託していると思います。
ここで大事なことは、委託をする人事部門と委託される研修会社で、なぜその研修が必要なのか、目的は何か、研修によって達成されるゴールは何か、そのゴールによって会社にどのようなメリットをもたらすかといったことについて、明確な共通認識を持っておくことです。
委託先へ依存し過ぎるのではなく、事業主体として自ら責任をもって考えぬくこともとても大事なのです。
そして、それら共通認識を、研修を実施する前に受講生にも明示しましょう。育成する側はどのような関わり方をしていくのか?受講生側は研修を通してどのような成長を達成したいのかといった点について丁寧にすり合わせをするのです。
研修では運営に関わる準備もたいへんなはずです。しかし、これらの本質的な準備をしっかりと行えたかどうかは、研修の成果に直結する重要なプロセスなのです。
研修中:学習と体験の組み合わせが重要
研修中の座学では、具体的な行動を促すためのスキルや考え方をしっかりと伝えることが重要です。
まず、行動に移す準備段階に関しては、「失敗するとしたらどのような原因が想定できる」かを考えることで、疎外要因を事前に取り除いたり、リスクをあらかじめ想定の範囲に入れてしまうテクニックも理解しておくと、行動習慣化への前向きな取り組みを促します。
そして次のステップとして大事なのが、目標の設定方法です。
「○○を意識して取り組みましょう」というような抽象的で曖昧な目標では具体的な行動は引き出せません。大きな構想を掲げて挑むことも良いことではありますが、行動レベルでの実践のためには、ファーストステップをできるだけ小さく、具体的にするなどの工夫が必要です。
また、自分自身の意思の力に頼り過ぎると継続することが困難になりがちでもあります。継続への障壁をできるだけ低くするために、目標に向かって行動を継続させるための仕組みや環境を整えることも大切です。
例えば、チームに自分の目標を宣言してピアプレッシャーを作り出したり、定期的に実践状況を振り返る日時を決めるなど、実践行動を後押しする方法も取り入れましょう。
研修後:振り返りと周囲のサポートが継続のカギ
研修と職場実践の後に振り返りの機会を設けることは、トレーニング全体を通じて最も重要なことといっても過言ではありません。
学んだことから新たな行動を起こすこと。その結果として職場環境や業務の進め方にどのような変化が生じたかを振り返ること。さらに行動したこと、実践したことを意味付けし、その後の、習慣化する上でのモチベーションを高めます。仮に、結果が思わしくなかったとしても、振り返ることが次の行動のヒントや指針になります。
加えて、とても大事なことは、周囲の理解や協力を得ておくことです。意欲や勇気をもって持って新しい行動を起こしても、周囲の反応が冷淡であったり、否定的なものだったりすると、新たな行動の芽はすぐにしぼんでしまいます。受講者の上司など周囲の関係者に対し研修の意図を共有し、見守って、時には勇気付けて支援してもらうことが大切です。
研修に先立ち、受講生との関わり方を示す「上司研修」を行うなど受講生の挑戦を促す環境を整える工夫とサポートを欠かさずに行いましょう。
まとめ
今回は、行動習慣化を阻む壁を突破する具体的な方法や意識すべき点について、研修前、研修中、そして研修後に分けて解説しました。それぞれのタイミングで押さえておくべきポイントは、以下の通りです。
・研修前:研修を行う意義や目的、具体的なプロセスについてすり合わせを行う
・研修中:具体的な行動につなげるための目標設定の仕方などを学ぶ場にする
・研修後:新たな行動で生じた成果を自覚するための「振り返り」の機会を設ける
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