近年、上司と部下が定期的に面談する「1on1ミーティング」を取り入れる企業が増加しています。今回は、1on1の目的や多くの企業が注目する理由、そしてそれによって得られる効果について解説します。
1on1ミーティングとは?
1on1ミーティングとは、その名の通り、上司と部下が1対1で行うミーティングを指す言葉です。企業によって実施する目的の違いはありますが、一般的に週に1回〜月に1回程度の間隔で定期的に上司と部下が対話をすることで、正しい現状認識や成長サポートを行うことが1on1の目的とされています。
1on1という言葉が広く使われ始めた2010年前後は、主に上司がチームの業務管理やリスク管理を行うための情報を収集する手段の一つと考えられていましたが、現在では、部下のメンタルケアや育成・キャリア形成支援のために行う面談や対話として語られることが多くなっています。
1on1が注目される理由
現在、1on1を取り入れる企業が増加しています。その背景にあるのが、社員一人ひとりとしっかり向き合い、ケアしたいという思いです。少子高齢化に伴う労働力不足のため、新たな人材の確保に苦慮する企業が増えていますが、その裏返しとして、今いる社員との関わりを見直し、つながりを強化する動きが広がっています。
上司が部下一人ひとりの思いを把握できる1on1は、そんな目的にも叶う施策の一つ。定期的に顔を合わせ、部下の話に耳を傾けることで、その時々の部下の悩みや課題を理解して、成長を支援することができます。
また、ちょっとした変化にも気づきやすくなるため、早期に問題の解決を支援して退職を未然に防ぐ効果もあります。
多くの企業が社員それぞれの個性を組織の付加価値や新たな成果につなげていきたいと考えるようになったことも、1on1への関心を高めている理由です。消費者のニーズや行動が多様化した現在において、たった一人の発想でビジネスの方向性を決定したり、新たな需要を掘り起こしたりすることが難しくなっています。そんな時代の中で、ビジネスを持続、または発展させる多様な発想を得るためにも、上司と部下が本音で話し合える場が必要になっています。
さらに、リモートワークの普及やWebツールなどを介したコミュニケーションの増加も1on1が注目を集める理由の一つ。1on1もオンラインで、という職場もありますが、直接顔を合わせて会話ができる機会として1on1を取り入れる企業も増えています。
1on1で得られる効果
1on1で得られる効果の最たるものは、相互理解の促進です。例えば、部下が抱く将来のキャリアビジョンや、チームや社会に対する貢献の思い、そして普段の会議や業務上のコミュニケーションの中では言い出せない個人が抱える悩みなどに耳を傾けることで、上司は成長の機会を創出することや、悩み解消のためのアドバイスや力添えなどもできます。
部下の話を傾聴して思いを引き出すことで、部下自身が、自分が行いたいこと、行うべきことに気づいていくプロセスを支援することができます。そうした対話によってもたらされる適切なフィードバックは、一人ひとりの成長やモチベーションアップを促し、組織を活性化させます。
また、適切なコミュニケーションでお互いへの理解を深めていくことは、組織における心理的安全性の確保や、エンゲージメントの向上にもつながります。
より本質的な効果も
上司が部下に対し、関心を持って接している姿勢を示せることも、1on1が持つ本質的な効果の一つです。
一般的に、自分に関心を持ってくれる相手かどうかで、コミュニケーションのあり方や深さは変わるものです。部下が「自分の話をしっかりと聞いてもらえた」という実感を持つことができるような対話の機会をつくることで、上司の部下の間の信頼関係はより深まっていくでしょう。
まとめ
従来の評価面談などとは異なる1on1によって、上司が部下の考えや本音に触れることは、組織の活性化や能力開発、人材の定着率の向上など、さまざまな効果をもたらします。
組織における心理的安全性の確保や、エンゲージメントの向上のため、今いる社員とのつながりを強化する動きが広がっている現在、お互いに理解し合える1on1の重要性は、さらに増していくでしょう。