労働人口の減少で新たな人材の確保がますます難しくなるなか、内定辞退やオンボーディング(早期戦力化)、その後の早期退職を防ぐ手段のひとつとして、内定者研修に注目が集まっています。
今回は、新入社員の定着やスムーズな戦力化、早期退職防止を図りたい企業にこそ実践してほしい、内定から入社までの間に行うべき内定者研修や、オンボーディングのポイントについて解説します。
オンボーディングとしての内定者研修
「オンボーディング」とは、新しく加わった人材がスムーズに環境に馴染み、短い期間で戦力になるよう促す取り組みのこと。
内定を得たばかりの学生が、一人前の社会人として行動できるようになるまでには、知識やスキル、そして意識の面で、いくつかの壁を乗り越える必要があります。
それをサポートし、社会人になる姿勢と態度を育んでいくのがオンボーディングを行う最大の目的です。
また、内定辞退や早期退職を防ぐのも、オンボーディングの重要な役割。
企業に対して就職活動中に描いていたイメージと、入社してはじめて知った実情との間には、必ずギャップが生じるものですが、うまく消化できないと、最悪の場合、早期退職につながる可能性もあります。
例えば、水槽に新しい魚を入れる際、水質などの急激な環境の変化で魚がダメージを受けないよう、少しずつ水槽の水に馴染ませていくように、内定者を迎える際には事前に内定者研修などの機会を通じて会社の環境や文化を無理なく受け入れてもらえるようサポートすることで、入社後のギャップを小さくすることができます。
入社前内定者研修で目指すべきゴール
入社前に行う内定者研修では、「知識」、「スキル」、そして「姿勢態度」の3つに関する指導を行うのが一般的です。
まず知識については、事業内容や社内ルールといった入社前に知っておくべき基本情報とともに、企業やそのビジネスを取り巻く社会情勢をキャッチしておくことの重要性や、そのために身につけたい情報収集の習慣などについて伝えるようにしましょう。
次に、スキルでは、入社後の業務を想定した実践的なものよりも、ビジネスマナーやビジネスライティング、PCの操作スキル、報連相といった基本的な実務スキルの指導が適しているといえるでしょう。
さらに、実務をあらゆる面から支える「論理的思考」や「課題解決思考」などの思考法を学ぶタイミングとしても、入社前のこの時期は最適です。
これらの知識、スキルは完全な習得を目指す必要はありません。あくまでもオンボーディングがここでの目的ですので、まずは「こんな知識やスキルが必要となる」と認識してもらうことを目指しましょう。
最後に姿勢態度について。就職活動中の学生を対象にした調査などでは、その企業を志望した理由について、「やりがい」や「社会貢献」などの回答が上位に並ぶ一方で、内定後に同様の質問をすると、「お金」や「自分の生活」といった答えに変わる傾向がありました。入社までの間に、企業としての理念や目指すべき社会への貢献、そのための組織の役割、そして本人への期待役割を伝えることで、貢献意欲を高めていくことが大切です。
入社前の不安もケア
内定が決まったばかりの時期は、「自分はこの会社でやっていけるだろうか?」「本当にこの会社で良かったのだろうか?」といったさまざまな不安が生じやすくなります。これらをしっかりケアすることも、内定者研修の目的。
入社までの間も細かくコミュニケーションを図ることで「この会社を選んで良かった」と入社意欲を高め、内定辞退を防ぐようにしましょう。
また、実際に新卒社員にヒアリングを行うと、面接で接した担当者の人柄に惹かれて入社を決めたという人が少なくありません。多くの場合、内定の時点においては採用担当者こそが最も身近な存在になります。採用担当者が不安な思いに寄りそう姿勢を示すことで、内定者は安心を感じることができます。
さらに仲間の存在も、入社後の不安払拭につながります。内定者を集めた集合研修やグループワークなどによって、ともに働き、成長していく仲間を知り、絆をつくることができれば、入社後の楽しい未来もずっとイメージしやすくなるはずです。
まとめ
社会人に必要最低限のマナーやスキルを学ばせるとともに、自由な学生から責任ある社会人のものへマインドを変えさせ、組織で働く準備を促すことも入社前に内定者研修を行う大切な目的です。
さらに、定期的なコミュニケーションで内定者に安心を感じさせることができれば、内定自体や入社後の早期退社を防ぐことにもつながるでしょう。
【関連テーマ】